研究施設の現状と将来計画 325
8.研究施設の現状と将来計画
日本の学術研究行政においては依然として憂うべき状況が続いており,その速やかな改善が望まれるところである が,研究成果の客観的評価,及び,研究や研究所の将来に亘る在り方についての議論等は常に重要な事業であること から,分子研においては第一期中期計画の終了を近い将来に迎えた今,前節でも述べた通り平成19年度において, 研究所全体に亘る評価を実施した。一方,大学評価の活動が必要以上に拡大化・詳細化しだしており,研究者の評価 疲れが深刻な事態になって来ている。これは,法人化の問題の一つの憂うべき現象であり,今後の改善が切に望まれる。
昨年度の分子研リポートで既に報告した通り,平成19年4月から分子研の組織を4領域に大幅に改編したが,各 領域内に留まらず領域をまたがった連携が深まることを大いに期待しているところである。これらの期待を踏まえた 上での,各施設の現状紹介と将来計画についての報告が以下に述べられている。
極端紫外光研究施設においては,小型で世界最高輝度を誇る施設としてトップアップ運転を目指した準備等々が進 められている。また,研究面でも良い成果がいくつも出ている。ただ,将来の次世代光源開発については多々議論を 重ねているところであるが,国の財政状況等のため将来の見通しは残念ながら立っていない。分子スケールナノサイ エンスセンターにおいては,文科省の事業として再出発した「ナノテクノロジーネットワーク支援事業」の中部地区 の拠点を分子研が担っており,他大学との連携で既に良い成果を上げつつある。また,920M H z N M R の更なる有効 活用を目指して,固体試料を温度制御した形で測定できる様に技術開発を進める準備をすると共に,他大学と連携し て「超高磁場固体 N M R を用いたバイオマテリアル・先端分子材料研究のための基盤技術開発と応用」の事業を概算 要求することを計画している。分子制御レーザー開発研究センターにおいては,理研との「エクストリームフォトニ クス」連携研究が順調に進行している。また,光分子科学領域内の協力,特に,極端紫外光研究施設との協力により, 新しい光の発生など新分野の創出が期待される。将来,センターの更なる拡充をも行う予定である。機器センターは 昨年度新たに発足したが,技術職員の集中的配属により,様々な機器の内外研究者による有効な活用を目指した活動 が開始されている。また,何と言っても将来に亘る最も重要な活動は「化学系研究設備有効活用ネットワーク」の運 用である。将来においては,分子研1機関による概算要求枠を越えた形での支援により,全国72の国立大学の研究 者の基盤的研究が支えられるようにすべきである。装置開発室においては,本施設を特定した形での外部評価を実施 し,多くの有意義なコメント等を頂いた。技術職員一人一人がしっかりとしたビジョンを持ちつつ,日々レベルアッ プに努力すると共に常に技術レベルの客観的なチェックを行うこと,非常勤職員や熟練技術者の雇用を考えること, 研究グループとの連携と共に研究論文における謝辞の徹底等々のご指摘は心すべきことであろう。また,設備の老朽 化の解消も今後の大きな課題である。計算科学研究センターにおいては,高性能分子シミュレーターシステムが3月 に更新され,新しい体制で利用者へのサービスが始まっている。大規模利用者のために設定された特別課題Sは順調 に進められている。一方,神戸に設置されることが決まっている次世代スーパーコンピューターのソフト面の一つの 大きな柱としての「ナノ分野グランドチャレンジ アプリケーション」の活動は,分子研が責任拠点となって本格的な 活動を開始した。ナノサイエンスを含む分子科学分野の分野拠点として,同分野のコミュニティーの皆さんと常に連 携を取りながら活動していくことが肝要である。
以上,いずれの研究施設も,分子科学コミュニティーの研究者が行う基盤的研究を支えると共に,最先端研究の遂 行を支援するために欠くことのできない施設であり,常に整備されていることが必要である。研究者自身の努力と共 に,国の学術研究支援強化が切望されるところである。
(中村宏樹)
8-1 極端紫外光研究施設(UV S O R )
U V S OR は,1983年完成後,エネルギー 750 M eV ,エミッタンス 160 nm- rad の電子蓄積リングにアンジュレータ 2台と超電導ウィグラを設置した典型的な第2世代の低エネルギーシンクロトロン光源であったが,2003年の大改 造以降の一連の改造により低エネルギーリングとして極端紫外光領域に最適化された第3世代光源 U V S O R - I I へと生 まれ変わった。エミッタンスは 27 nm- rad で定常的に運転されており,これは 1 G eV 以下の光源(建設/立ち上げ調 整中のものを除く)では世界最高性能である。UV S OR -II の運転時間は建設時の放射線申請により1日12時間に制限 されてきたが,2006年夏に変更申請を行い,1日24時間の運転が可能となった。これによって,通常の1日12時 間の共同利用に加えて将来に向けての R & D の時間を夜間等に確保できるようになった。
また,U V S OR - II 計画を実現させるための前準備として,22本あったビームラインの評価を実施し,U V S OR - II 計 画が実現したときにその光源性能を生かせるビームラインの強化策/改造策を打ち出す一方,光源性能を生かせない ような老朽化したビームラインや他施設に比較して光源性能に優れないエネルギー領域まで拡大したビームラインを 順次,廃止していった。現在,13本まで絞り込んだが,2007年度の研究成果は,22本あった時代の研究成果をす でに量・質ともに越えるようになった。現在の U V S O R - I I におけるビームライン再構築の大方針は,8カ所ある偏向 電磁石それぞれに明るいビームラインを1本ずつとし(光源の発散を複数のビームラインで分割して使うのではな く),8カ所ある直線部のうち,4 m の長直線部のすべてにアンジュレータを導入し,1.5 m の短直線部の2カ所にも アンジュレータを導入することである。現在,偏向磁石ラインは10本→9本へ,直線ラインは3本→4本へ移行中 である。アンジュレータ2台は真空封止型であり,比較的短波長領域を,また,残り2台は可変偏光型であり,比較 的長波長側をカバーする。これらのビームラインはすべて世界トップクラスであり,国際的な利用も始まっている。
8-1-1 UV S O R -II の高度化の現状と展望
今後1〜2年の U V S O R - I I 光源加速器の高度化としては,①トップアップ運転の導入,②軌道安定化,③挿入光源 の更なる増設の3つが柱になる。また,④多様な利用モードを可能にする運転時間の見直しも必要である。将来的には,
⑤現在,スウェーデンで立ち上げ調整中の小型リング M A X - I I I の光源性能を超える U V S O R - I I I のための改造も視野 に入れる必要がある。以下に,それぞれについて簡単に説明する。
(1) トップアップ運転の実現に向けては,既に,ブースターシンクロトロンのフルエネルギー化(従来は最大エネル ギーが 600 M eVであったが,電磁石電源の増強により 750 M eV まで向上)と放射線遮蔽壁の増強とを完了し,入射 路のフルエネルギー化を2007年春から可能にした。2008年春に,フルエネルギー入射調整,輸送効率の向上,イ ンタロックシステムの整備などを行い,2008年度後半にトップアップ運転の定常化を目指す(加速器施設としての 放射線変更申請の許可が必須)。また,トップアップ運転と24時間運転を組み合わせれば,予算増加がない中,同じ ようなビームラインの数を増やさないでも当分は利用者の増加を凌げることになる。ビームラインの絞り込みは質の 向上のための予算確保の方策として不可欠である。
(2) U V S O R - I I では数時間で 100 ミクロンを超えるような軌道変動が観測されており,光源本来の高輝度特性を活か す妨げとなっているが,現在既にこの軌道変動の原因究明と軌道安定化システムの開発に目処がたったところである。 水平方向の軌道安定化については既に部分的にフィードバックシステムを導入しており,今後,水平垂直両方向の安 定化システムを導入する。
(3) U V S O R - I I 光源加速器の設計はアンジュレータ利用に最適化されたものとなっており,光源本来の特徴を活かす ためにも,アンジュレータ及びビームラインの早期の整備が望まれる。どのようなアンジュレータを整備するか,利
研究施設の現状と将来計画 327 用側と協議しながら検討を進めていく。現在,B L 6U を建設中であり,そのあとは B L 4U がターゲットになる。さらに, 入射点の移動など機器の再配置を行うことで,現在入射に使用している 4 m の長直線部(最後の一カ所)を挿入光源 用として,長尺の B L 1U を具体化する方向での議論を行っている。当面,外部資金獲得を目指すが,うまく獲得でき なかったときには,長期リースなどを利用することで,現予算から捻出することも考える。
(4) 光源性能そのものではないが,運転時間についても,拡大の余地が出てきている。UV S OR -II の運転時間は現在, 1日24時間が可能となった。マンパワーの問題でユーザー運転の延長を直ちに行える状況にはないが,シングルバ ンチ運転,自由電子レーザー利用など,ユーザーの限られる特殊な運転モードを夜間に実施することを試験的に開始 している。柔軟な運転モードの切り替えは小型施設の特徴を活かせるものであり,従来にないシンクロトロン光の新 しい利用形態が開拓できるのではないか,模索しているところである。
(5) 更に長期的な展望としては,U V S OR -III 計画と名付けることのできる光源リングの更なる高度化改造の可能性が ある。予備的な検討により偏向電磁石を複合機能型とすることで,現在のエミッタンス 27 nm-rad を更に 15 nm-rad 程 度まで改善できることが既にわかっているので,長直線部4カ所すべてに高性能なアンジュレータを導入することと 併せて,検討を進めていく。
8-1-2 UV S O R 自由電子レーザーの現状と展望
U V S O R における自由電子レーザー開発は,加速器の設計段階から光共振器の建設を想定しているなど,施設の看 板ともいえるものである。実際90年代には,円偏光型光クライストロンの導入により当時の発振短波長世界記録を 樹立するなど,F E L研究で華々しい成果を挙げた。しかし,その後は,D uk e 大学や産総研などにおける F E L専用リ ングの稼動,第3世代リング E l ettra における F E L実験の開始などにより,開発研究面での競争力が低下し,一方, 発振波長域は紫外から可視光に限られていることから,通常レーザーとの競合もあり,利用研究はほとんど進まなかっ た。
しかし,2000年代になり光源加速器が U V S O R - I I へと改造されたことで,再び世界的な競争力を取り戻した。低 エミッタンス化と高周波加速系の増強によるピーク電流値の向上で,波長 200–250 nm の深紫外の領域で大強度の発 振が可能となった。また,従来 F E L実験は電子エネルギー 600 M eVで行っていたが,750 M eVでも発振できるよう になり,その結果,ビーム寿命が長くなり発振継続時間が長くなると同時に平均出力も向上,波長によっては 1 W を 超えるまでになり,蓄積リング F E Lとしては出力で世界最強となった。深紫外領域で波長連続可変,高出力という特 徴は,通常レーザーと比べても一定の競争力があり,利用の申し込みも徐々に増えてきている。今後は,利用に向け た研究開発・装置の整備が重要となってくる。
F E L性能そのものに関する今後の展望としては,光クライストロンの更新による更なる短波長化,大強度化が考え られる。B L 1U 計画を進める際に,3 m 強の光クライストロンを導入することで,E l ettra や D uk e 大学と同等の波長 180 nm 付近での発振も可能となる。更なる短波長化には,ミラーそのものの開発研究が必要となってくる。
8-1-3 外部レーザーを併用した新しい次世代光源開発
2005年に U V S O R - I I の高周波加速と同期の取れるフェムト秒レーザー装置が導入された。これを利用した複数の 新しい光発生法に関する研究がスタートしている。
レーザーバンチスライスは90年代の後半に米国の研究チームにより提唱されたビーム技術であり,極短レーザー パルスと電子バンチをアンジュレータ中で相互作用させることで,電子バンチの一部に強いエネルギー変調が生成さ
れ,このバンチが蓄積リングを進行する際に変調を受けた部分が切り出される,というものである。切り出されたバ ンチの一部はレーザーパルス長と同程度の長さとなるために,その部分からの放射光を取り出すことでフェムト秒の 放射光パルスを生成する,というのが当初のアイデアであった。しかし同時に,残りのバンチ上に形成されたディッ プ構造からテラヘルツ領域のコヒーレントシンクロトロン放射が生成されるため,現在はこれら2つの目的で研究が 進められている。これまで,A L S ,B E S S Y - II が先行しており,U V S OR - II での実験は世界的には3例目ということに なる。最近では S L S でも開始されたとの情報があり,S oleil などでも導入が検討されているようである。
他 の 施 設 で は バ ン チ ス ラ イ ス 実 験 の た め に 加 速 器 の 一 部 を 改 造 す る な ど 大 掛 か り な 準 備 が 必 要 で あ っ た が, U V S O R - I I では既存の自由電子レーザー用の装置群を流用することで加速器本体には全く手を加えることなく実験を 開始することが出来た。また,電子エネルギーが低いために,必要なエネルギー変調を生成するためのレーザーパワー が比較的低くてよい。最初の実験で直ちに,大強度のコヒーレントテラヘルツ光の発生を確認でき,その後,分子研 の国際共同研究を利用したリール工科大学(仏)との共同実験で入射レーザーパルス形状の制御により,波長可変準 単色のテラヘルツ光の生成に成功するなど,世界的にもトップレベルの成果が挙がるようになってきた。テラヘルツ 光の観測は既存の赤外ビームライン B L 6B を用いて行っている。今後は利用法の開拓とそれに向けた光源開発を更に 進めていく。
なお,テラヘルツ光の観測によりバンチスライスが起きていることは実証できているものの,フェムト秒放射光の 直接観測はまだ行っていない。バンチスライス法は既存の放射光リングで,従来の放射光とは異なる時間構造,ある いは,ピーク強度の桁違いに強い光を比較的簡便に生成できる。これら各種の光の単独での利用に加えて,通常の放 射光や F E Lを含めた,複数の性質の異なる光を同時に利用するタイプの利用方法を開発していくことが今後,新しい 研究分野を切り開くことにつながる可能性がある。
8-1-4 新しい光源建設の可能性
新しい加速器の建設を伴う将来計画の検討では,これまで様々な可能性を幅広く検討してきた。現在,世界に於け る先端的な光源加速器施設は全く異なる性質を持つリング型と直線型を併設するのが標準になりつつある。通常の レーザー光源を組み合わせることで,さらなる発展も期待されている。U V S O R はこれまでリング型を中心に新たな 光源開発を組み込んで共同利用に供してきたが,今後は U V S O R で培ってきた光源開発技術を直線型にも応用するこ とで,世界に先駆けて新たな特性をもつ光源が分子科学に於いて最初に使えるようにする必要があろう。
現在考えられる将来計画の主なものについて以下にまとめておく。
(1) リング型光源
U V S OR の次期計画として,U V S OR - I I から U V S OR - I I I への改造ではなくて,全く新しいリング型光源を建設する 場合,考えられる方向性は以下の3つであると思われる。
(a) 1GeV級小型X線リング
(b) 2–3GeV級中規模第3世代リング (c) 1GeV級超高輝度リング
このうち ( a) は 1G eV級の小型リングに超電導偏向電磁石を導入することで硬X線の発生可能な小型施設を建設す るというものであるが,これについては現 U V S O R の後継機として岡崎の地で考える必要はなく,愛知県が名古屋大 学等の県内大学の協力(U V S O R 施設も部分的に協力)を得て実現を目指しているところである。高輝度ではないも
研究施設の現状と将来計画 329 のの U V S O R - I I では出せない硬X線領域までカバーする施設が近隣にできることになり,U V S O R - I I とは相補的な役 割を果たす。また,U V S O R ではハード的な資源が限られ,大学等の学術研究に加えて,民間利用を受けるだけの余 裕はないが,愛知県の施設では民間利用が中心になるので,U V S O R として愛知県の施設の場を使ってソフト面で民 間利用への協力ができる可能性がある。
(b) の 2–3GeV級中規模第3世代リングは,東大・東北大がかつて建設を目指していたような規模・性能の光源であ る。東大や東北大が断念したことを考えると現在の日本では予算規模や敷地の問題など実現は容易ではなく,UV S OR の後継機の可能性のひとつにするのはあまりに非現実的である。一方,このクラスの施設は現在,中国,台湾,韓国 では既に建設されていたり,計画が認められたりしているため,今後は U V S O R の海外展開も視野に入れて考える必 要があろう。幸い,韓国からは光源開発への全面的協力など期待されているので,今後,連携を深めていく予定である。
( c) は 1G eV級でエミッタンス 1 nm- rad もしくはそれ以下の超低エミッタンスリングを想定している。V U V領域で の回折限界光源の実現を目指す。既存の加速器技術を用いて実現できる可能性があるものである。また,共振器型自 由 電 子 レ ー ザ ー や C H G な ど 外 部 レ ー ザ ー と 組 み 合 わ せ た コ ヒ ー レ ン ト 光 発 生 装 置 も 併 設 で き る 可 能 性 が あ る。 UV S OR の後継機としては,これが最も適当であろう。
(2) 直線加速器を用いた自由電子レーザーの可能性
現在,世界に於ける先端的な光源加速器施設は全く異なる性質を持つリング型と直線型を併設するのが標準になり つつある。X線自由電子レーザーのテスト機程度もしくはもう少しエネルギーの高いライナックを利用して,シード 光を用いたシングルパス型自由電子レーザーを原理とする光源を U V S O R に併設する。X線自由電子レーザーやリニ アコライダーなどの建設を通じて確立される加速器技術と,現在 U V S O R - I I で行っている C H G に関する基礎研究で 得られた知見などをベースに実現する。V U V ・軟X領域でのコヒーレント光,極短パルス光の発生を目指す。併設が 不可能な場合には他機関の加速器装置を利用した光源開発や利用研究も想定しておくべきであろう。
8-2 分子スケールナノサイエンスセンター
自然科学研究機構・分子科学研究所・分子スケールナノサイエンスセンター規則第2条に,ナノセンターの設置目 的として「センターは,原子・分子レベルでの物質の構造及び機能の解明と制御,新しい機能を備えたナノ構造体の 開発及びその電子物性の解明を行い,これらが示す物理的・化学的性質を体系化した新しい科学を展開するとともに, ナノサイエンス研究に必要な研究設備の管理を行い,これらを研究所内外の研究者の利用に供し緊密な連携協力の下 で共同研究等を推進することを目的とする」との記載がある。即ち,ナノセンターは「ナノサイエンス研究を行う」 機能と,「ナノサイエンス研究に必要な研究設備の管理と共同研究の推進」という機能が要求されていることになる。
平成19年度からは,分子研の組織改編に伴いこれまでのナノセンターの機能が(新)分子スケールナノサイエン スセンターと(新)機器センターに分かれることになった。ヘリウムや窒素の液化機・供給装置を含め汎用的な装置 類およびそれらの装置の責任者であった技術職員は機器センターに所属替えとなった。センター長は,物質分子科学 研究領域・電子構造研究部門の横山利彦教授が併任で務め,ナノセンター専任教員は,ナノ分子科学研究部門の小川 琢治教授(平成19年9月に大阪大学大学院理学研究科教授として転出,以降は当センター兼任),鈴木敏泰准教授, 永田央准教授,櫻井英博准教授,先導分子科学研究部門(客員部門)教員に加藤晃一教授(名古屋市立大学大学院薬 学研究科,平成20年4月より岡崎統合バイオサイエンスセンター教授に着任)が配置された。
共同研究支援に関しては,平成19年度から文部科学省のナノテクノロジー・ネットワークプロジェクト(5-5 参照) を研究所として受託し,ナノセンターの業務としてこれを運営しており,この業務を遂行するため,併任教員を配置 した。ナノ計測研究部門には,横山利彦教授,西信之教授,岡本裕巳教授,永山國昭教授(岡崎統合バイオサイエン スセンター),ナノ構造研究部門には,魚住泰広教授,永瀬茂教授,佃達哉准教授(平成19年10月に北海道大学触 媒科学研究センター教授として転出)が併任し,ナノネットプロジェクト業務を実施している。ナノセンターが管理 する共通機器は,920MHz NMR ,300kV分析透過電子顕微鏡,走査電子顕微鏡,集束イオンビーム加工機,クリーンルー ムがあり,クリーンルームを除いてはナノネットを通して共同利用(協力研究と施設利用)に供されている。ナノネッ トの内容や成果に関しては 5-5 に記述する。
センター運営委員会は,センター長を委員長とし,専任併任教授・准教授全員,センター以外の教授・准教授若干名, 外部委員からなる。19年度外部委員は,宇野英満愛媛大総合科学研究支援センター教授,松重和美京都大学大学院 工学研究科教授,村田道雄大阪大学大学院理学研究科教授であった。特に超高磁場 N M R に関する現状と将来に関し て評価や提言をいただいた。
超高磁場 N M R は昨年まで実施されていたナノサイエンス支援において設置された。溶液から固体試料のナノ構造 精密研究を実現する世界最高かつ唯一の装置である。本機の機能を縦横に活用して固体ナノ触媒,有機−無機複合コ ンポジット,C N T (カーボンナノチューブ)及びフラーレン類縁体の精密構造研究,タンパク(中でも膜タンパクや 糖タンパクのような難結晶性複合タンパク),海洋性巨大天然分子などのナノサイズ分子構造体の高次構造や動的挙 動の精密解析などに対して,ナノネットを通して共同利用に供されている。
平成20年4月より,岡崎統合バイオサイエンスセンター教授として加藤晃一教授が着任しており,これまで以上 に精力的に本装置を活用したタンパク質構造解析研究が遂行される。また,物質分子科学研究領域・分子機能研究部 門の西村勝之准教授(ナノ構造研究部門併任)は温度可変プローブなどの開発を行い,本装置を活用した研究展開が 進むであろう。さらに,桑島邦博教授のグループもパワーユーザーとして加わり,所外共同利用を含めてますます充 実した先端利用が期待できる。
研究施設の現状と将来計画 331 今後,短期的には,以下のような事業を計画中である。
(i) 既に利用経験のある多くのユーザーや新たな潜在的ユーザーに広く超高磁場 N M R 装置の現況および施設・設 備の環境や機能を周知するため,ニュースレターを発行する,
(ii) 分子研を代表する大型測定機器として,より利用アクセスを高めるためのパンフレットなどを作成する, (iii) 溶液,固体双方の温度可変測定(温度可変領域の拡張)の実現に向けた検討を開始する。
また,人事に関しては現状で当面特に問題はないと考えるが,中期・長期的な事業展開として N M R 高度化を推進 する。このため,まずは予備測定の実施を可能ならしめる 600M H z クラスの固体測定に対応できる中規模 N M R 装置 の導入を実現したい。920M H z N M R を最大限有効に活用するには,同じ環境で作動する予備装置を利用できること が極めて重要である。また,現状では
1
H と
15
N の 2 核種しか測定できないので,核種の拡張を目的としてプローブ の開発をも目指す。これらの高度化を実現するため,また,分子研 N M R をコアとした全国研究ネットワークを形成 して,外部資金獲得を目指す。
8-3 分子制御レーザー開発研究センター
分子制御レーザー開発研究センターは,旧機器センターからの改組拡充によって平成9年4月に設立された。以降, 平成18年度までの10年間,分子位相制御レーザー開発研究部,放射光同期レーザー開発研究部,特殊波長レーザー 開発研究部の3研究部において所内課題研究及び調査研究を行う他,多数の共同利用機器,小型貸出機器を維持管理 し,利用者の便に供してきた。各研究部には助教授及び助手が各1名配置され,またセンター共通の技術支援は技術 課の3名の技術職員(うち一名は,後日機器センターに配置換え)が行ってきた。放射光同期レーザー開発研究部は 猿倉助教授が担当し,分子研 U V S O R との同期実験に向けた基礎的レーザー光学技術の開発の他,大出力紫外パルス レーザーやコヒーレントテラヘルツ光源の開発などの成果を挙げたが,平成18年1月に大阪大学レーザー・エネル ギー学研究センターの教授として転出した。特殊波長レーザー開発研究部は平等助教授が担当し,分子科学の新たな 展開を可能とする波長の可変な特殊波長(特に赤外域)レーザーの開発の他,マイクロチップレーザー光源等の開発 を行い,産業界からも注目される成果を挙げてきた。分子位相制御レーザー開発研究部は,分子制御のための時間的 特性を制御したレーザーの開発と反応制御実験を目的として設置されたが,佐藤助教授が平成12年に転出した。
一方,平成18年度には分子研の研究系・施設の組織改編へ向けた議論が活発に行われたが,この中で,本センター のあり方に強く関連する事柄は以下の2点であった。第一に,レーザーや放射光を重要な研究手段とし,光と物質と の相互作用に基づく分子科学を展開する研究領域として新たに光分子科学研究領域が設けられることになった。従来 はこの研究領域の研究が,主に分子構造,電子構造,極端紫外光科学の各研究系と,極端紫外光研究施設と本センター とに別々に所属する研究グループによって行われてきた。しかし,この組織形態は,多くの共通した概念や方法論を 基本とする研究グループを縦割りに分断し,研究者間の情報の共有や研究活動における日常の議論を阻害する要因と なっていた。一方,レーザー光源を用いた研究グループは,17年度から始まった「エクストリーム・フォトニクス」 のプログラムにより,既に当時,組織横断的なつながりを持つ機会が増えていた。そこで,この新研究領域を創設す ることにより,放射光関連の研究グループとの間の壁も取り払い,本研究所における光分子科学研究をさらに活性化 することを目指したのである。第二の点は機器センターの設置であった。本研究所には以前,同センターが設置され ていたが,その後,極低温センターと化学試料室と共に廃止され,本センターと分子物質開発研究センターが設置され, しかも後者は分子スケールナノサイエンスセンターへと改組された。しかし,共通機器を一括して管理運営し,所内 外の研究者の共同利用を促進する必要が改めて認識され機器センターが再度設置されることとなった。このため,本 センターが管理運営していた共通機器の大部分が機器センターに移管されることになった。この措置により,本セン ターは従来の共同利用に関する業務を大幅に圧縮することができ,その業務のほとんどを開発研究に移すことが可能 となった。これら2点はどちらも本センターが分子研における光分子科学の開発研究の中心として活動するための環 境を整えるものとなった。
このような背景を考慮すると,組織改編後の本センターは,光分子科学研究領域の研究グループと密接な連携をと りながら開発研究センターとしての機能を果たさねばならない。ただし,当該研究領域の研究グループと本センター の役割の違いははっきりと認識すべきである。すなわち,当該研究領域における個々の研究グループがそれぞれの興 味のもとで光分子科学における研究分野を開拓しようとするのに対して,本センターの業務は,光源開発を含む光分 子科学分野の将来像を大局的に展望したときに,今後世界をリードして行く上で重要になって来ると思われる方向の 新分野を切り拓くための装置,方法論の開発研究に重点がおかれるべきである。本センターが開発研究を本務とし, そこで得られた知識,技術,方法論を蓄積し,共同利用研のセンターとして開発された部品や装置および手法を所内 外に提供・共同利用に供する点にこそ,当該研究領域における通常の研究活動と一線を画する違いが存在する。
研究施設の現状と将来計画 333 ただし,これらの研究と開発研究の間を明瞭に区別することは困難な場合があり,これが渾然一体として研究がな されることもあり得る。このような状況を鑑みると,本センターと当該領域間の研究グループの相互乗り入れは不可 欠である。したがって,新組織のもとでは開発要素のある研究を遂行する当該研究領域のグループが本センターに併 任し,本センターのリソースをも使いながら開発研究をするなどの措置をとる必要がある。
このような理念のもとに,本センターは19年度より,光分子科学研究領域との連携のもとに,光分子科学の新分 野を切り拓くための装置,方法論の開発研究を行なう開発研究施設として生まれ変わった。新たに開発される装置や 方法論は,所内外の分子科学者との先端的な共同研究を遂行するためのリソースとして提供することが好ましい。新 センターは以下の3つの研究部門より成り立っている。
(1) 先端レーザー開発研究部門;平等拓範(専任),加藤政博(UV S OR より併任)
(2) 超高速コヒーレント制御研究部門;菱川明栄,大森賢治(以上,光分子科学研究領域より併任) (3) 極限精密光計測研究部門;岡本裕巳,大島康裕(以上,光分子科学研究領域より併任),
松本吉泰(京都大学大学院理学研究科より兼任)
それぞれの部門の任務は,(1) テラヘルツから軟X線にいたる先端光源の開発;(2) 主に高出力超短パルスレーザーを 用いた量子制御法の開発;(3) 高空間分解および高エネルギー分解分光法の開発などである。すなわち,レーザー光 源の開発から新たなスペクトロスコピー,マイクロスコピー,制御法に至る統合的な研究手法を開発することを目的 としている。これらの分野での開発研究から他に類を見ない装置や方法論を開発し,本センターが分子科学研究所の 一つの重要な柱として分子科学分野へ大きく寄与し,新たな共同利用の機会を創出していかねばならない 。 そのため には,現在1名しかいない専任の准教授数を,各部門1名の体制にする事が強く望まれる。また,技術職員が積極的 にこれらの研究開発に参加することによって,新たに開発された方法論をセンターに蓄積していくための原動力とし て活躍する事も重要である。その意味では,現在2名である技術職員が少なくとも部門数と等しい3名以上に増員さ れ る こ と が 強 く 望 ま れ る。 一 方, 先 端 レ ー ザ ー 開 発 研 究 部 門 に お け る 加 藤 教 授 の 参 加 は, レ ー ザ ー セ ン タ ー と U V S O R との連携による新しい研究分野の創出を目指すものであり,今後,益々先鋭化する先端レーザー光源を用い た観測制御技術と放射光を用いた研究との連携がさらに進められる。将来的には,レーザーセンターと U V S O R を包 括した,光分子科学研究センター(仮称)の設立も視野に入れ検討を重ねるべきであろう。この試みは,分子研の光 科学分野における研究環境の個性を対外的にアピールする為にも必要であると考える。
8-4 機器センター
8-4-1 機器センターの現状と将来
分子スケールナノサイエンスセンターと分子制御レーザー開発研究センターの汎用機器を統合して,平成19年4 月より機器センターが新たに発足した。機器センターでは化学分析機器,物性測定機器,分光計測機器,液体窒素・ ヘリウム等の寒剤供給装置と,大別して4種類の機器の維持・管理を行っている。また,いくつかの機器を化学系研 究設備有効活用ネットワークに公開しつつ,この事業の実務的な支援を行っている。機器センターの業務を円滑に運 営するために,センター長(併任)のほかに7名の専任技術職員(化学分析機器2名,物性測定機器1名,分光計測 機器1名,寒剤装置2名,化学系ネットワーク1名)と2名の非常勤事務職員(機器センター1名,化学系設備ネッ トワーク1名)を配置している。平成20年度からは分子スケールナノサイエンスセンターの透過型高分解能電子顕 微鏡の維持管理を主とする技術職員が機器センターに配置される。化学分析機器は山手地区の N M R ,質量分析装置, 元素分析装置,X線回折装置などで,物質合成を行う上で最低限なくてはならない装置である。物性測定装置は明大 寺地区の E S R ,S Q U I D 磁束計,X線回折装置,超伝導磁石付希釈冷凍機,走査型電子顕微鏡,熱分析装置など,新 たに開発した物質の物性を評価する上で必要な汎用装置である。分光計測装置は三種のレーザーシステムの他,蛍光 分光装置,紫外可視近赤外分光装置,円二色性分光装置などの汎用機器を保有している。機器センターの役割は研究 所内外の共同利用の支援である。技術職員が担当する機器は厳密に分担が区分けされているわけではなく,化学系設 備ネットワークの支援にも参加し,分子スケールナノサイエンスセンターの保有する機器の保守にも参加している。 共同利用の形態は施設利用であるが,現状では化学分析機器と寒剤は所内の利用者が主であり,所外の利用者は主と して物性測定機器を施設利用している。平成19年度の所外施設利用件数は57件であった。
機器センターの役割は汎用機器の維持管理と技術支援であり,研究系で開発しているような特殊な装置を保有して いるわけではない。昨今のように膨大な予算を駆使できる研究グループが増えて,機器も人も自前で調達できるよう になると,機器センターは必要ないようにもみえる。しかし,そのような研究グループが研究者コミュニティーに占 める割合は極僅かである。独創的な研究はむしろ研究費が必ずしも潤沢ではない少人数のグループから生まれること が多い。独創的な研究成果が世に認められれば,研究グループも予算も大きくなり,機器センターのような施設を必 要としなくなるかもしれないが,機器センターはそれら大きくなる前の研究グループを下支えし,飛躍を手助けする 役割を担っている。この役割は所内利用者に対しても所外利用者に対しても同じような意味合いを持っている。
機器センターの予算は現有の装置類を保守するためのものであり,老朽化に伴う機器の更新を定期的に行う予算は ない。高額の化学分析機器や汎用性の高い物性測定装置などは特定の研究グループに予算措置するのではなく機器セ ンターに予算を投入して,最高性能の機器を常に使用できる状態を構築する必要がある。機器センターはパルス E S R のような特殊装置も保有しており,共同利用を通して特色ある研究を展開している。化学系設備ネットワークを支援 しつつ,特色ある最高性能の機器も整備してゆく努力が必要である。
上のような精神で機器センターを運営すべきであると考えるが,機器センターは発足後ようやく一年を経過しよう としている段階であり,目前のいくつかの事項を解決してゆかなければならない。
(1) 緊急に立ち上げる必要のあるのは機器センターの事務室の整備である。現在,機器センターは事務室をもってい ないため,とくに明大寺地区の職員は極低温棟,レーザー棟,化学試料棟,研究棟に分散して仕事をしている。月二 回の会合以外には全員が顔を合わせる機会もないために,緊急の場合,お互いの連絡に齟齬をきたすことも生じてい る。化学試料棟を改修して平成19年度までに化学系設備ネットワーク用の事務室の整備を整えつつあるが,20年度 の早い段階に機器センター全体の事務室の整備を完成させる必要がある。
研究施設の現状と将来計画 335 (2) 現在,分子科学研究所の明大寺地区では平成元年に導入した神戸製鋼所の全自動液体ヘリウム液化装置を用いて, 年間約 4 万リットルの液体ヘリウムを供給している。この設備は導入後20年近くの時間が経過しようとしている。 この装置が使用不能になるとき山手地区のヘリウム液化機から液体ヘリウムを供給することが計画されているが,こ の計画を実行に移すためには明大寺地区で回収したヘリウムガスを山手地区へ移送するための地下埋設配管が必要で ある。この配管工事は事務的手続きを含めて長時間を要するため,液化機が使用不能になる前に工事を行っておく必 要がある。ヘリウムは全地球的に貴重な資源であるが,現在は全面的に米国に頼っている。米国でも資源保護の動き が出ており,この状況がいつまでも続くとは限らない。限られた資源をリサイクルするシステムを維持することは極 めて重要であり,早急な対策が望まれる。
(3) 機器センターは 15 テスラーの超伝導磁石を付属した希釈冷凍機を所有している。この装置は分子磁性や分子導 体など分子科学の分野で有用な装置であるが,汎用装置とは言い難い特殊な装置の部類に入る。現在,この装置を使 用する所内利用者がいないので,客員教授あるいは准教授として専門家を招聘して,冷凍機を用いた極低温下におけ る比熱や磁化などの測定装置の立ち上げを行う必要がある。
(4) 現在,西グループが使用しているピコ秒パルスレーザーシステムを将来機器センターに移管することの可能性を 検討している。維持のための予算や技術職員の配置などいくつかの問題を抱えているが,平成20年度中には目途を つける。
(5) 所外施設利用者を対象に機器センターについてアンケート調査を行ったところ,機器センターに対する期待は大 きく,機器の充実と旅費の増額に対する希望が多かった。所外施設利用者には半期に一件あたり2泊3日1回の旅費 が支給されるが,一回で目的が達成されるような実験は非常に少ない。半期の間に7,8回利用しているヘビーユー ザーに対しては旅費の支給を2回に増やすなどの方策が必要である。
8-5 装置開発室
装置開発室は分子科学の新展開に必要な新しい装置および技術を開発する事と日常の実験研究に必要な部品および 機器の設計・製作に迅速に対応するという2つの役割を担っている。新しい装置の開発には,実験研究者との密接な 協力体制で取り組んでおり,所内研究者のみならず所外の実験研究者とも平成17年度に整備した施設利用を通じて 行っている。迅速な部品製作等は加工技能を持つ短時間契約職員の協力により対応している。この様に,装置開発室 の重要な業務である新しい装置・技術の開発と日常の実験研究に対する技術支援との両方に技術職員が取り組んでいる。
8-5-1 独自技術の開発
機械技術では,平成18年度から「脆性材料の超精密加工」として,国立天文台の先端技術センター設置の超精密 加工機を利用して,赤外光用の光学材料である硫化亜鉛(Z nS )結晶を用いた回折格子の試作を行ってきた。これら は名古屋大学及び国立天文台との共同開発として実施した。この共同開発は赤外天文観測用の光学素子製作を課題と してきたが,平成20年度は加工対象の材料をマイクロミキサー,バイオセンサー,レーザー用光学部品等に利用で きる石英ガラス,単結晶シリコン,銅タングステン,ハステロイなどの脆性材料(または超精密加工が困難とされる 材料)について進める計画である。
もう一つの「小径工具を用いたマイクロ加工」についての取り組みも3年経過し,100mm以下の工具を使うノウハ
ウが蓄積されてきた。平成19年度はサブミクロン駆動の X Y Z ステージを導入し,微小切り込みや精密位置決めなど 新しい加工法を応用しマイクロ部品の製作対応を進めつつある。これらは今後,多方面からの研究支援に利用できる ので,さらに技術開発を行っていく。
電子回路技術では,高速化や多機能化が進む電子回路の需要に対応するために,これまで C PL D や F PG Aなど,プ ログラマブル論理回路素子を用いたカスタム I C の設計・製作を行ってきたが,新たにアナログ回路を集積化する要 求に応えるための回路設計技術の導入を計画している。具体的にはバイオセンサーに用いる微小電流−電圧変換回路 のマルチチャンネル化を目的としたカスタム L S I の設計・製作・評価を行う。昨年度は東京大学大規模集積システム 設計教育センター(V D E C )を利用して,V L S I 設計支援用シミュレータによる増幅回路の集積回路設計に取り組み始 めた。
8-5-2 設備
装置開発室の加工,計測評価などの設備は,老朽化,性能不足,精度低下などが進み,分子研の新しい展開を担う 研究支援に影響するため,毎年,重要事項として対策の検討を進めている。平成16年度から中村所長の配慮で,計 測評価のための機器の一部が新規導入および更新され,先端技術から取り残される事態から踏みとどまっているが, 加工に関してはまだ十分とは言えない。今後さらに研究所の方針に合わせた設備計画を運営委員会等で検討していく 事とする。
高度な加工設備は機械本体そのものも高価であり,また設置環境を整え,維持管理など付帯経費も必要であること から,導入はなかなか困難であるが,他機関,他大学または民間企業を含め,すでに設備されている機器を利用する 方法も検討していきたい。現在,国立天文台が所有している超精密加工機の利用を行っている事例もあるが,これらは, 年度毎に共同開発として利用申請書を提出し採択される必要があり,研究支援や速やかな対応には向かない面もある。 また,新規な材料等を加工する場合には,加工条件の探索から始まるので,長期に亘っての使用,共同利用の場合の 研究内容との整合性,更には,利用料や派遣経費などの問題がある。これらを踏まえ,研究支援に効果的な加工機器 活用を調査・検討していく。
研究施設の現状と将来計画 337
8-5-3 外部評価
装置開発室は平成16年度より,専任の教育職員を置かない技術職員だけで構成された施設として運営されてきた。 今年度はその新しい体制から3年が経過したことで,施設としての現状について点検・評価ならびに今後の運営方針 を検討するために,外部から下記の評価委員を招き外部評価を実施した。
所外評価委員:田原 譲(名古屋大学、教授)
山田省二(北陸先端科学技術大学院大学、教授) 以下に,各委員からの報告を掲載する。
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2007年9月14日 文責:山田省二(北陸先端科学技術大学院大学ナノマテリアルテクノロジーセンター教授)
(1) 外部評価委員会開催日時及び場所 日時:2007年8月27日(月)13:00–18:00 場所:分子科学研究所研究棟201会議室 スケジュール:
13:00–13:20 宇理須教授挨拶、分子研・装置開発室概要説明(鈴井出席)
13:20–15:00 電子回路グループ3名(吉田、内山、豊田)、ガラス加工1名(永田)業務報告 15:00–17:00 機械グループ5名(鈴井、近藤、水谷、矢野、青山)業務報告
17:00–17:30 施設設備見学 17:30–18:00 講評、意見交換
(2) 外部評価委員会での評価要望事項(装置開発室長より事前に提示)
①装置開発室の(果たすべき?)役割(所内、日本全体の観点から)。現状はその役割を果たしているか?
②分子科学研究における装置開発室の重要度。
③装置開発室の技術職員の技術レベルは? 機械,電気,ガラス。
④装置開発室が抱える問題。技術的(技術レベル?),組織的,将来的
⑤④の諸問題解決のためのアドバイスなど
⑥分子研(全体)に対する建設的批判提言。
(3) 評価レポート
以下,(2) の諸事項を参考に,委員会での業務報告に対する諸評価を項目別にまとめて記述する。 1) 全体の印象
インタビューが,発表者と評価委員2名というほぼクローズした雰囲気で,かつ比較的なじみのある場所で行われ たせいか,発表はおおむね良くまとまっており短い時間にそれぞれの業務のエッセンスが簡潔に紹介された。また, 発表態度からは,各自の業務に控えめではあるがそれなりの興味とプライドを持って取り組んでいる様子が推測され
好ましい印象を持った。ただ,装置開発室の業務の全体の支援業務の中での位置づけ,あるいは他の技術職員グルー プとの比較のような話が余りなく,分子研全体の中での役割分担などもあまりよくわからなかった気がする(「分子 研リポート」には概要の構成員の項,及び技術室の項大体の説明はあるものの詳細な記述は無かったようである)。
「 構成員 」 の記述から類推すると,技術課1,2班を併せて装置開発室と称しているように感じられる。
昨今の国立大学等の独立法人化に伴い,「 競争 」 と 「 評価 」 が横行し技術職員でさえも様々な事務作業をこなすこ とが多く,ややもすると労働強化に繋がりかねない事態が散見されるようであるが,インタビューで聞き取った限り では,依頼業務を含む通常業務は所定の勤務時間内でほぼこなせている現状が確認された。このことは,日常的業務 で手一杯になること無く将来に向けた各々の基礎力・技術力の涵養にも一定の日常的時間が割ける余裕があることを 意味し極めて重要である。また健康上の観点からもこのような仕事の平均的ペースを将来にわたって維持することの 重要さは今後もっと意識されても良いのではないかと考えられる。
2) 装置開発室の現状等
2-1) 装置開発室の分子科学研究における重要度,果たすべき役割,現状など
いうまでもなく装置開発(室)の分子科学研究における重要度は一般的にはさらに増大しつつあると考えられる。 ただ当該分野における関連装置は,その種類は広く多岐にわたり,装置 1 台の規模は大きくなると同時にその複雑さ はさらに増しつつあると考えられる。そのような装置をたとえ小規模な物を中心とするにしても限られた人数と時間 ですべてをカバーするのは事実上不可能である。したがって,修理などのルーチン的仕事以外に取り組む創造的な業 務としては当然ある技術分野にフォーカスせざるを得ない。その分野を取捨選択する基準は,恐らく分子研全体の運 営方針に基づく中期計画に沿った研究開発計画に沿ったものになるであろう。分子研として発展させるべき研究分野 を支援する業務が人員的にも予算的にも優先されることになるのではないかと思われる。
既にインタビューの中で,いくつかの具体的な方針, a) 超精密機械加工/研磨
b) マイクロ微細加工 c)NMR プローブ d)NMR 関連各種回路 e) 各種極低温用測定セル
などが紹介されていたがこれらは恐らく分子研全体の研究体制整備,レベルアップの方向と一致しているのではない かという印象を持った。今後全体計画との関連をさらに意識した具体的な装置開発方針の提案と推進が内部的にも外 部的にもより望ましいのではないかと考えられるし,この種の具体的方針が 「 分子研の装置開発室 」 としての特徴を 発揮することに繋がり,より外部にもアピールするものになると考えられる。
2-2) 現在の装置開発室の技術レベル
ガラス工作に関しては良くわからないが,回路と機械工作に関しては,長年(技術室発足から30年)の蓄積を反 映し,かなり高いレベルにあるように思われた。今後このレベルの引き継ぎ,維持,発展が要請されているわけであ るが,人的リソースの増強が特にない場合は,成るべく特化すべき領域を広げずその分野での技術の最先端の進歩に 追随すべく日々レベルアップを図ることに集中すべきであろう。この際特に参考になるのは,外部,特に最先端の研 究を推進している大学,研究機関,企業との共同研究,交流を意識的に維持継続し,常に技術レベルの客観的なチェッ クを進めることである。常にリフレッシュされ維持された高い技術レベルこそがひいては内部からの要求にもより高 いレベルで答えることを可能にするものである。
研究施設の現状と将来計画 339 3) 問題点と解決策
3-1) 組織的観点
機械加工や回路試作に関する依頼件数と人手に関しては,現在の所ほぼバランスが取れているようであるが,今後 外部の依頼等も積極的に引き受ける,或は外部からの依頼が急増するような事態に立ち至ったときどのように組織的 に対応するかはあらかじめ考えておく必要があるかもしれない。特に組織を変更しないで対処するには,例えば機械 加工で既に実施しているような非常勤職員の活用を臨機応変に進める方策も有効であろう。但しこの際技術職員と年 齢的に近い若年労働者でなく熟年労働者の雇用を優先する配慮が良いかも知れない。
3-2) 技術的観点
全般的に見て装置開発室の現在の技術レベルは,分子研の研究に密接に関連する分野を中心にかなり高いと考えら れる。今後これを維持発展させるためには,新技術職員の採用(増員?)や現技術職員の日常的な業務の重要な一環 として学習と研修を継続することが必要である。技術室全体での長期人員計画の策定と学習・研修のための時間を現 技術職員に組織的に保証していくことがますます重要になってくると考えられる。
3-3) 将来的観点
分子研中期計画等組織全体の長期計画と連動して,各グループが中期目標,或は中期重点取り組み項目等を設定し, その達成目標と計画をそれぞれのメンバーが共有してその実現に協力して取り組むこと等が好ましいと考えられる。 現在の機械加工グループの当面の目標である「マイクロ機械加工技術(の開拓?)」に関しても,組織的裏付けと長 期的計画の中での位置付けがより明確にされることが望ましいのではないか。
3-4) 提言など
技術室,及び装置開発室の業務の内外の先端的研究との関連やそれらの研究への貢献をより組織的公式的に明らか にする仕組み(研究者が執筆する論文における貢献の明示,謝辞の徹底と貢献内容のデータベース作り及びその公開 等)を作ることが重要である。これにより技術職員が自らの仕事の意義を再認識するのみならず高いプライドをもっ て将来業務に取り組むことが可能となり,担当業務を意欲的に推進するための大きなモチベーションとなりうるもの である。
また「分子研リポート」によるとこれまで149名の技術職員が在籍し,111名が転出している。この流動性の高 さは技術職員としては他の日本国内の諸機関と比較しても特筆すべきレベルであると思われるが,異動等が比較的困 難と言われる装置開発室の職員に関しても流動性を高める工夫が日常的になされるべきであろう。この点に関しても 具体的な方向と達成目標等が議論されて良いと思われる。
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名古屋大学・エコトピア科学研究所 田原 譲
貴研究所より外部評価の依頼を受け,8月27日に装置開発室の現状,各技術職員の活動について説明を受け,ま た職場視祭を行ったので,ここにその所見を報告します。
現状では研究に役立つ装置開発に対してよく貢献されているように思いますが,装置開発室の今後の方向性に対し ては職員各自ができるだけ明確なビジョンを持つよう努力されるとよいように感じました。
(1) 活動状況
電子回路グループ3名,ガラス加工1名,機械グループ5名の各構成員が研究者への技術支援という本務について は,積極的にかつ誇りを持って取り組んでおられることを感じました。小さな組織でありながら,研究者の特殊な技 術要求に対して様々なアイデアを出して設計,試作,製作を行っている様子がよくわかりました。その成果はここで 作った装置をもとに行われた研究で,所内の研究者が研究賞を受けていることなどでも明らかと思われます。また柱 となる技術支援の他にも,工作実習の実施・技術研究会の実施・所長奨励研究の実施など間接的な技術支援や,独自 投術の開発を含めた自己研鑽が行われており,積極的な活動の様子がうかがわれます。
(2) 組織と運営
評価者が所属する大学には研究室に密着した形での仕事をする技術職員と,共通施設の技術職員という2種類の形 態がまだ残っているのに対し,分子研装置開発室では後者の性格の職員の集合体であり,少人数の組織としては明確 な役割分担と効率的な仕事の進め方のできる組織として確立しているように思われます。しかしその分研究者との密 度の高い交流がもたらす研究・技術両側面のレベルの向上という側面が少し弱められているのかもしれない,という ことを感じました。ただし評価者が所属する大学との間では,技術職員どうしの相互交流によりお互いの技術レベル の向上を図っており評価できます。
(3) 設備の状況
機械加工に関連した必要最小限の設備は揃っていますが老朽化した装置も目立ちます。現在の高度化した技術の時 代に汎用精密機械加工装置の導入は予算的に厳しいものがありますが,ある程度の投資は継続的に行われるべきと思 われます。その際この装置開発室の技術の特徴をより明確にしていくことが重要でしょう。またこれに関連し一見ハ イテクの対極にあるような古くさい加工装置を使いながら,研究の鍵となるような技術が生み出される可能性をなく さないために,熟練技術者の経験(例えばガラス加工など)を知的財産として残す努力をぜひお願いしたいと思います。
(4) 情報発信と社会貢献
業務報告集は分かりやすくよくまとめられており,技術情報の発信として十分レベルに達していると思われますが, 欲を言えばこの組織の特徴を強調して示すような工夫や,技術検索で所内外の研究者が成果を使えるような工夫(設 計・製作・計測などのノウハウのデータベース化,例えば用いた要求仕様・解決策・失敗例・成功理由なども加えて, キーワード検索で過去の経験が新しい装置開発に活かせるようなもの)もぜひ考えてほしいと思います。社会貢献と しては研究所の一般公開がその一端であり技術職員の方も十分貢献されているように感じました。
研究施設の現状と将来計画 341
8-6 計算科学研究センター
計算科学研究センターにおいては,2000年度における計算科学研究センター化にともない,従来の共同利用に加 えて,理論,方法論の開発等の研究以外にも,研究の場の提供,ネットワーク業務の支援,人材育成等の新たな業務 に取り組んできているところであるが,2007年度においても,次世代スーパーコンピュータプロジェクト支援,分子・ 物質シミュレーション中核拠点形成,ネットワーク管理室支援等をはじめとした様々な活動を展開してきている。上 記プロジェクトについてはそれぞれの項に詳しく,ここでは共同利用に関する活動を中心に,特に設備の運用とセン ターの将来構想の検討の必要性について述べる。
2008年2月現在の計算機システムの概要を図と表に示す。システムは大きく分けて2系統からなる。最初のもの は 共 同 利 用 に 供 し て い る シ ス テ ム で あ り, 超 高 速 分 子 シ ミ ュ レ ー タ と 高 性 能 分 子 シ ミ ュ レ ー タ か ら な る。 前 者 は 2006年7月に導入し明大寺地区に設置され,後者は今年度2008年2月に更新されて山手地区に設置されている。 もうひとつは,次世代スーパーコンピュータプロジェクトにおけるアプリケーションの開発環境であるが,これらは いずれも分子科学やナノサイエンスの計算科学分野における高性能システムである。
「超高速分子シミュレータ」,「 高性能分子シミュレータ 」 は,いずれも量子化学,分子シミュレーション,固体電 子論,反応動力学などの共同利用の多様な計算要求に応えうるための汎用性があるばかりでなく,ユーザーサイドの PC クラスターでは不可能な大規模計算を実行できる性能を有する。
まず,「 超高速分子シミュレータ 」 は富士通の PrimeQuest と S GI の A ltix4700 から構成される共有メモリ型スカラー 計算機で,両サブシステムは同一体系の C PU(Intel Itanium2)および OS (L inux2.6)をもとに,バイナリ互換性を保っ て一体的に運用される。システム全体として総演算性能 8 T flops で総メモリ容量 10 T B yte 超である。
P ri meQ uest サブシステムは,64 C P U コア /256 G B からなる S M P ノード 10 台で構成される。演算ノード間は 16 GB /s のバンド幅で相互接続され,大規模な分子動力学計算などノード間をまたがる並列ジョブを高速で実行すること ができる。A ltix4700 サブシステムは 2 ノード構成からなり,それぞれ 512 C PU コア /6 T B および 128 C PU コア /2 T B を有する NU MA型の共有メモリシステムである。さらに本サブシステムには,磁気ディスク装置 S G I T P9700 がジョ ブ作業領域として提供され,実効容量 104 T B および総理論読み出し性能 12 G B /s を有するディスク I /O を実現する。 本サブシステムは大容量(最大 6 T B )の共有メモリおよび超高速ディスク I/O に特徴をもち,大規模で高精度な量子 化学計算を可能とする。
一方,2008年3月に導入された「高性能分子シミュレータ」は,演算サーバ,ファイルサーバ,フロントエンドサー バおよびネットワーク装置から構成される。演算サーバは,日立製作所製の S R 11000 後継機であり,1 C PU コアあた り 18.8 G f l ops の演算性能を持ち,1 ノードが 32 C PU コアと 256 G B y te メモリを有する共有メモリ型スカラ計算機で ある。理論総演算性能は 5.4 T flops,総メモリ容量は 2.3 T B yte であり,一時作業領域として 23 T B yte のディスクを装 備している。本演算サーバは,浮動点少数演算量が多い分子科学計算はもちろんのこと,高クロック周波数 C P U の 強みを生かし,従来性能が出しにくかった整数演算や論理演算を多用するプログラムも性能を発揮することが期待さ れる。ファイルサーバは,共同利用システム全体のホームディレクトリ等のサービスを行い,128 T B y te のディスク を装備している。またバックアップ領域として 60 T B yte のディスクも装備している。
共同利用に関しては,2007年度も 144 の研究グループにより,総数 589 名にもおよぶ利用者がこれらのシステム を日常的に利用しているが,システムの運用にあたり,世界をリードする計算科学研究を本センターから発信してい くことができるよう,特に大規模ユーザのために施設利用Sを設定している。これに従い,審査により,平成19年
度は4件の利用グループに本システムを優先的に使用していただき,従来の共同利用の枠を超えた超大規模計算の環 境を提供している。
さらに,次世代スーパーコンピュータプロジェクト・ナノ分野グランドチャレンジ研究におけるアプリケーション 開 発 環 境 と し て,H i tac hi S R 11000 と H A 8000 を 運 用 し て い る。 こ の う ち,S R 11000 は, 総 合 理 論 演 算 性 能 5.44 T f l ops,総メモリ容量 3.072 T B の共有メモリ型スカラ並列コンピュータであり,システムは 16way(C PU)を持つ演 算 ノ ー ド 50 台 で 構 成 さ れ, ノ ー ド 間 は 8 G B y te/s の ク ロ ス バ ー で 相 互 接 続 さ れ て お り, 周 辺 装 置 と し て 6.8 T B の R A I D ディスク装置を装備している。H A 8000 は,総合理論演算性能 5.495 G F l ops,総メモリ容量 1.796 T B の分散型 ス カ ラ 並 列 コ ン ピ ュ ー タ で, 演 算 ノ ー ド と し て 2 C P U を 持 つ P C サ ー バ 449 台 か ら 構 成 さ れ,128 ノ ー ド ご と に 2 G bps で相互接続してクラスタを形成している。各クラスタは,周辺装置として 1.1 T B の R A I D ディスク装置を備え ている。
計算科学研究センターは,国家基幹技術の一つとして位置づけられている次世代スーパーコンピュータプロジェク トの中で,ナノサイエンスに関わるアプリケーション開発という重要な役割の一端を担っており,分子科学に関わる 計算科学研究のナショナルセンターとでもいうべき分野拠点として,活動を展開している。
この中で,昨年度は計算科学研究センターの前身である分子科学研究所電子計算機センター設立30周年にあたり, 2007年2月に開催された設立30周年記念スーパーコンピュータワークショップにおいては,基調講演,パネルディ スカッション等を通して理論・計算分子科学研究コミュニティから計算科学研究センターに対する将来にわたる期待 が寄せられた。これを受けて,計算科学研究センターを事務局としてセンターユーザーをはじめとした理論・計算分 子科学研究コミュニティの主だった先生方により懇談会が組織され,次世代スーパーコンピュータへの関わりを中心 に計算科学研究センターの位置づけ,果たすべき役割等について検討がなされた。そこでの議論は,次世代スーパー コンピュータへの提言として意見書の形にまとめられ,文部科学省へ提出される予定となっている。
その中での計算科学研究センターに期待されている重要なアクティビティの大筋は以下の通りである。
(1) 神戸に設置される次世代スーパーコンピュータの共用に際して,理論・計算分子科学領域を含め,計算科学研究 センターがナノサイエンス分野,分子科学分野の分野拠点として機能していくこと,つまり神戸センターが計算機の 運用に対して責任を持つ一方で,分子研は分野の研究に対して責任を持ち,研究をリードし,取りまとめを行ってい くこと。
(2) このため,分子科学研究所に理論・計算ナノサイエンス特別研究センターを設置し,計算科学研究に加えてソフ ト開発を含めたライブラリの整備や研究支援活動を行っていくこと。
このような提言を受け,計算科学研究センターではこれらを実施していくための体制や事業計画等,具体的な方策 を検討するために運営委員会に外部の先生も含めた将来構想委員会を設置し,議論を開始しようとしているところで ある。
研究施設の現状と将来計画 343 平成20年度 システム構成
高性能分子シミュレータシステム 演算サーバシステム
型番:HIT A C HI S R 11000 次世代モデル OS:A IX
C PUC ore 数:288(32C PUC ore × 9 ノード) 総理論性能:5.4T F L OPS
総メモリ容量:2.2T B (256GB × 9 ノード) ディスク容量:23T B (/work)
ファイルサーバシステム
型番:HIT A C HI E P8000/550Q(2 ノード) OS:A IX
総メモリ容量:64GB (32GB × 2 ノード)
ディスク容量:120T B (/home(37.4T B )、/week(20.0T B )、/save(37.4T B )) 60T B (バックアップ用)
フロントエンドサーバ
型番:HIT A C HI E P8000/550Q(2 ノード) OS:A IX
総メモリ容量:64GB (32GB × 2 ノード) 高速ネットワーク装置
型番:A laxala A X 6708S